パートタイム労働者と事業主との苦情・紛争の解決の仕組みが整えられたことです。
パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)改正案が2007秋季国会で通過し、平成20年4月から施行されます。
従来のパート労働法には努力義務規定しかなく、実効性の面で頼りない法律でしたが、今回の改正では初めて義務規定をもうけるとともに、罰則も規定しました。 本稿では紙面の関係上、事業者に義務付けられた規定だけを解説します。
義務規定その1
業務の内容および業務の責任の程度からみて職務の内容が通常の労働者と同一であるパート労働者を「職務同一短時間労働者」と呼称します。 その「職務同一短時間労働者」のうち、雇用期間の定めが無いか実質的に雇用期間の定めの無いものと同視されうる程度に反復更新されているパートであって、職務の変更が通常の労働者と同様の態様および頻度で見込まれる者については、待遇について差別的取り扱いをしてはならない、として禁止しています。
この改正法では、所定労働時間が短いパートでも、正社員と同一の仕事をしているパートの一定部分については同一労働同一待遇(賃金を含む)を法律で義務付けるということです。 (同一労働同一待遇といっても所定労働時間が正社員に比べて短いパートは相応に月額賃金が低くなるのは当然です。)
しかし、条文の後半にあるような、転勤はまだしも配置転換や業務変更などの「職務変更を正社員並みに見込まれるパート」がどれくらい居るでしょうか? 柳澤厚労相は4−5%と言ったそうですが、私の実感では中小企業においては0%つまり皆無と思われます。「正社員並」というのがネックです。 この意味で、本条文案の実効性はほとんどないものと考えます。 なお、本条文案に違反した場合の法文上の罰則はありません。
義務規定その2
労働条件の文書による交付が法で義務付けられました。 従来から雇入れ通知書、雇用契約書、労働条件通知書または労働契約書など形式を問わず、労働条件を文書で明示する義務は、労働基準法で規定されています。ただ、昇給に関する事項や賞与、退職金については「文書」での明示義務がありません。
新パート労働法では、賃金や契約期間、労働時間、就業の場所など従来から文書で交付することが義務付けられていた項目の他に、パートに限って、「昇給の有無」、「退職金の有無」及び「賞与の有無」の3つを、「文書」で行なうことを事業者に義務付けました。
これは、正社員が一律的に労働時間や賃金について就業規則などでルール付けされているのに対し、パートは個別に労働時間や賃金などの待遇を決められている現状があり、雇用開始後に言った言わないや当然権利があるはず、いやパートはその権利はない、などのトラブルが多いことなどを勘案しているのだと思われます。
なお、この条文案の違反には罰則(10万円以下の過料)があります。
なお、労働時間や休日や休暇については従来から労基法で文書交付が義務付けられています。したがって、年次有給休暇についても法定以上の日数を付与する旨の文書交付が必要です。
義務規定その3
通常の労働者への転換の推進
事業主は、短時間労働者を通常の労働者へ転換することを推進するため、以下の3つの措置のいずれかの措置を講じなければならない。
1. 通常の労働者を募集する場合には、その募集の内容を事業所内に掲示するなどしてパート労働者に周知すること。
2. 通常の労働者の配置を新たに行なう際には、その配置への希望を申し出る機会をパート労働者に与えること。
3. 一定の資格をもつパート労働者を対象にした試験制度を設けることなどを実施し、通常の労働者への転換のための制度を設けること。
パートさんの多い事業所では、3つの措置のいずれかを実施すればいいというように読まずに、3つの措置の全てを実施するようにしたいものです。
義務規定その4
教育訓練についての均衡の確保
職務同一短時間労働者に対しても、同じ職務につく通常の労働者について実施する教育訓練を実施しなければならない。
パートに対して、教育訓練に要する時間をどのように確保するかが課題となりそうです。 業務に関連した研修であって事業主から義務付けられたものは労働時間ですので、賃金支払義務が生じます。ぎりぎりの人員でやりくりしている零細企業にとっては重荷となりそうです。経過措置や特例があってもよさそうな条文です。
着目点
パートタイム労働者と事業主との苦情・紛争の解決の仕組みが整えられたことです。事業所内で自主的に解決を図ることを努力義務としている(改正法第19条)のは当然のこととして、事業所内で解決ができない場合には、パートタイム労働者自身の申請(代理人として特定社会保険労務士が行うことができる)により、都道府県労働局による助言、指導、「勧告」が行われます。(改正法第20条)
また、もう一つ注目すべきことは、都道府県労働局内に設置されている「紛争調整委員会」の中に「均衡待遇調停会議」が設置され、これによりパートタイム労働法による事業主の措置義務に関する事項の「調停」制度が設けられます。(改正法第21条)
これは、パートタイム労働法は労働基準法とは違って取締法規ではないため、労働基準監督署の所管ではなく、民事調停がふさわしいからです。
調停会議による調停勧告の受諾がなされないときには、労働審判や民事裁判に移行することになります。 このことは、平成20年3月に施行された「労働契約法」においても同じです。
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