労働契約法(2008年3月施行)制定の意義
労働基準法は、行政が事業者を取り締まるための根拠となる法律(取締法規)であるのに対し、労働契約の当事者である会社と従業員との民事上のルールに関してはわが国には存在しませんでした。そのため紛争になった場合には、判例法理が準用されたり、強制力の弱い民法にその論拠を得るしかありませんでした。
「労働契約法」は昨今の個別労働紛争の増加を背景に、平成18年4月に始まった労働審判制度と歩調を合わせるように、平成19年に制定され、平成20年3月から施行されます。
先日行われた労働契約法の説明会で、労働基準監督署は、この法律に関して事業主を取り締まることはせず、周知させることしかしない、と言っていました。つまり、この法律は民事上のルールを民法の特別法として制定したものといえます。
労働基準法のような、罰則や行政の監督・指導はありません。しかし、個々の労働者と企業との紛争予防に対応することを基本的な考え方としており、個別労働紛争に至ったときの、紛争解決制度の判断の根拠となることを狙いとしているようです。
「おれの会社は、こういうやり方だ!」と強がりをいったとしても、紛争調整委員会や裁判所に持ち込まれたときには無効となり、この法律の施行前と比べれば、いとも簡単に個別企業は損害賠償等の責任を取らされることになります。 旧来の、いわゆる日本企業の企業論理や企業内自治といったものは、客観的な合理的かつ社会通念上相当であると認められない場合は通用しないこととなったのです。
労働契約法は全部で19条と、非常にコンパクトな内容となっていますので、一度全文を読まれることをお勧めします。労働契約法全文
これらの条文のほとんどが、従来の労働判例の集積です。労働契約の成立から変更、継続、終了などについての原則を明示しています。判例ではなく「法律」になったことに大きな意義があります。
今後の労使関係における影響を一つだけ取り上げてみます。
就業規則が効力を発するための条件(第11条関係)が今回定められました。
@労働基準法に定める必要事項の記載
A合法的に選出された労働者の過半数代表者の意見聴取
B労働基準監督署への届出
の三つが済まされていない限りは、事実上就業規則としての体をなさなくなったわけです。
とりわけ、従来は周知さえすれば、労働基準監督署への届出を遅滞していても、就業規則の効力そのものに影響はないとされる扱いの判例法理が存在していましたが、労働条件に関わる部分については、適正な手続が欠落していれば、就業規則としては使い物にならないと定め(法定法理)られた。いわゆる近年時代を反映した「手続主義の法のパラダイム」を定着させることとなりました。
以上
(特定社会保険労務士 村岡利幸氏による著作権フリーの解説文から一部引用しました)

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