その9 自己管理型労働制の導入には長時間労働を抑制するための風通しの良い労使関係が必要だ!
ホワイトカラーエグゼンプション(自己管理型労働時間制)の
導入案はあいにく見送りとなりましたが、私は、様々な中小企業の労働環境を見知っている立場から、条件つきで
この案には賛成の考えでした。
この自己管理型労働時間制度がなぜいいのかといいますと、「時間で働く」ことから脱却し、自己の裁量で自主的に 仕事の段取りを決め、仕事のやり方を決める働き方が可能になるからです。家庭と仕事のバランスをとりながら、 定時に帰宅する日もあれば、遅くまで在社して業務に関する調べものをする日もあるといった働き方が選べる点です。
現状の労基法の中では、会社に残ってスタディ(勉強)する時間も、フリーディスカッションして業務に関連する 情報を社内から入手する時間も、割増賃金の対象とされてしまいます。会社がそれを支払わなかった場合には サービス残業として摘発されるリスクがあります。
こうした自主的に会社に残ってより高い成果を出すために努力する、あるいは学習して自分の仕事の幅を広げ情報を 収集したりすることは、人が職業人として成長することに欠かせないプロセスだと思います。仕事が面白く楽しく、 また、自分を高めてくれるものだ、と感じることがどれほど大切なことか。その道のプロフェッショナルといえる ような人たちはすべて「夢中になって仕事や研究に没頭」した経験があると思います。
普通のサラリーマンは、会社を一歩出たら仕事のことを忘れるものです。 まして休日ともなれば仕事のことは一切考えません。
会社に居て(ときには、周囲に人がいて)こそ、仕事のことだけに集中することができます。 仕事に集中し気分が乗っているときは、時間がたつのは早いものです。夜の11時をまわることはザラでしょう。 ときには体調は悪くないのになぜか調子が出ない日もあります。そんな日は誰にとがめられることなく 定時に退社すればいいのです。上司に命令されていやいやながら残っている場合と、自主的に仕事に熱中している 場合とを、杓子定規な既存の労働時間法制で論じることは無理だと思われます。
誰にとがめられることなく定時に帰ることができる。これが自己管理型労働時間制の従来とは違う働き方だと思います。 このプラスの面をとらえずに、この制度は長時間労働を無制限に容認し助長するものだ、 と考えること自体がおかしいのです。
ただ、冒頭で私は、この法案に賛成するが「条件つき」だと書きました。
自己管理型労働時間制は、これを導入するそれぞれの事業場に労使委員会を設置し、そこでの決議と、 対象労働者の同意が制度導入の前提条件となっています。
経営者と従業員が対等の立場で労働条件について話し合える環境が整っていない企業では、ほとんどの場合、 圧倒的に有利な経営者の力のもとで、従業員が無理を強いられることになることが予想されます。 ですから、何でも言える風通しのよい会社であることがこの制度のメリットを享受するための条件であり、 それを担保するための法的基盤が必要だと思うわけです。
政府の労働政策審議会では、「労働者が経営者と対等の立場で話し合えるわけがない」、 と労働側委員が発言していましたが、私は一概にそうとはいえないと考えています。 従業員を大切にする人間尊重の経営が、掛け声だけではなく全国の企業で実践されている報告を聞く機会が 増えてきています。社員にとっての幸福とは何か、を経営者は夜昼もなく考え、経営数字と格闘しながら できることから実行していく姿があります。従業員の意見や声を聞く機会を積極的にもうけて、 ES(従業員満足)を追求しています。私の所属する中小企業家同友会には、「労使見解」というものがあり、 従業員を真のパートナーととらえ共に企業を成長させ、地域と共に幸福になろうという理念があります。
「労使見解」では「対等な労使関係」の項があり、そこにはこう書かれています。 「労使の間では日常不断に生まれてくる労働諸条件やその他多くの問題の処理については、労使が対等な立場で徹底的に話し合い、(中略)しかし同時に、いわゆるものわかりの良い経営者が イコール経営的にすぐれた経営者とはいえません。労働条件の改善について、直ちに実行できること、 実行について検討してみること、当面は不可能なことなどをはっきりさせることが必要です。」
私は、経営者と従業員との対等な立場での労使コミュニケーションを担保するものとして、労使懇談会を、 定期にかつ民主的に開催することを社内規定で義務付けることを提案します。 それを中小企業向けに就業規則の条文案として作成したのが、次の社長懇談会の規定です。
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第○○条(社長懇談会) |
引用文献「人を生かす経営」中小企業家同友会全国協議会発行

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