その4 甘い考えで人を雇用していないか
2004年に1社、2005年にも1社顧問先が倒産しました。
いずれも設立してあまり年数が経っていないにもかかわらず従業員数100名を超えるまでに拡大しており、
市場の成長性や経営者の意欲の面で大いに将来を期待していた顧問先でした。
社労士として労務に関与しながらそういう事態になったことに対し言い表しようのないほど自らの力不足を感じています。
社労士は「顧問」と呼ばれながらも労務関係の書類作成や給与計算などの
業務イメージが先行し総務人事のアウトソーシング業という捉え方をしている経営者が多いようです。
もちろんそうした運営スタンスをとっている社労士も多いのですが、最近の開業社会保険労務士の中には同業他社との
差別化と生き残りをかけて人材マネジメントコンサルタントへの道を自ら切り開いている人がたくさんいます。
社労士は労働法に精通し、経営者の立場に立って人事制度や
雇用管理システムを提案できることを社会に向けて強くアピールしていかなければならないと感じています。
本当の意味で顧問またはブレーンという立場になれば経営陣の誤った優先順位や方針選択があった場合、
意を決して忠告することができます。
企業は、設立間もない頃はあぶなっかしいものです。 社長の思い入ればかりが強く、早く採算ベースに乗せたいがために当然のように無理をしがちです。 顧客開拓や資金繰りに躍起になるばかりで従業員の方への配慮が不足します。人材が足りなくなって募集をして人材確保だけはするが、 人材メンテナンスがないために退職者が増え、しだいに採用と退職を繰り返すようになります。こうして人材の採用と育成にかかる経費がかさみ、 経営を圧迫する羽目になりがちです。
私は起業家支援業務の際、創業時の事業計画書を見る機会が多いのですが、 人材採用計画はあっても人事労務をどうするかについて記述したものを見たことがありません。 これからは事業を起こす際には経営者塾などに通うか自分で経営書を読むなどしてマネジメントをしっかり勉強し、自分なりの求める従業員像を描いてから他人を雇用すべきだと思います。
私が起業家から依頼される業務は社会保険や労働保険の手続きや助成金で あったりするわけで創業時の事業プランづくりにとやかく口出しすることは多くはないのですが、相談を受ければとことんディスカッションする ことにしています。
就業時間、休日、給料の決め方、業務分担、どういう人材が必要かなど、人事に関するあらゆる質問をし、 考えてもらうようにしています。
創業者に対する国からの助成金が一時のピークを超えたとはいえ今も花盛りです。 私は事務所開業以来8年間そうした起業助成金の相談や手続き代行をしており、既にお手伝いした企業は50社を超えたと思います。 しかし残念ながら今残っている企業は半分くらいしかありません。なくなった企業は決して何百万という国からの交付金を 当てにしていたわけではなく普通に事業を起こしたいという夢に向かっているときに助成金のことを知り事業への後押しとして 助成金を捉えていた企業ばかりです。
それなのになぜ半分が事業に失敗するのか。
社長一人でやれるビジネスなら、優れた商品や市場があれば成功するでしょうし、 人材や労務で悩むことはありません。しかし他人を一人でも雇用するのであれば、経営計画には財務計画と併せて人事計画が必ず必要です。
厚生労働省の創業助成金は人を雇用することが条件になっています。 私が助成金手続きを支援した中で事業がうまく行かなかった起業家に共通することは、人を雇用することに対する心構えが甘いか、 認識が不十分であったといえます。
人を雇用するときは、その人の人生を預かる気持ちで雇用しなければなりません。 少なくとも若年者を雇用する場合はそうです。会社は実務に関する教育と共に社会人としての人格形成の場とならなければなりません。 事業家にはそれくらいの覚悟とともに経営理念や人材観が必要なのです。
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